すごいニッチ手稿

この報告いる?

週記9/20-9/26 Varvarigence

食人全書を読んで

まず、表紙がとんでもない。
漆黒の背景に二人の人物が描かれている。ナイフとフォークを握りしめた壮年の男性が、食卓に上がった見事なプリケツに大歓喜しており、その背景ではサトゥルヌスが我が子の腕をフランスパンみたいに頬張っている。どうも他人の食事風景を覗き見るようで少しの罪悪感を覚えるが、お皿の上が大犯罪なので帳消しなのである。


そして、本文もとんでもない。
世界中の食人事情を綴る軽快な筆致を彩るように、素朴かつド畜生なコラム(「食人で仲直り」「ピンチな時は少年水夫を食べよう」等)や、グロやかな挿入画像(「おまえ煮込み」「スモーク男性」等)が散りばめられている。たいへん人に薦め難く、本棚に置き難い、まごうことなき怪書籍だろう。しかし、これを読んで良かった点が二つある。

 

一つ目は「食人野郎」呼ばわりされた際の理論武装が完了した事。

何せ最近、とても破廉恥な事を言われるようになった。
自分は自由度の高いオープンワールドゲームが好きで、どの作品においても概ね、文明人というより野蛮人、道徳的というより冒涜的、善行よりも暴行といった、町一番の悪太郎スタイルでプレイする。特に、Conan ExilesやFallout4の最高難易度のように、「食べねば死ぬ」ようなサバイバルゲームにおいては食人もやぶさかではなく、棍棒即食卓は日常茶飯事である。

するとどうだろう、いつしか友人の一人に「自分=食人」のイメージを根付かせてしまい、遂には『あのゲーム、カニバリズム出来るみたいやけどomochicさんはやらないの?』等という未開域なお声がけを賜った。しかし、自分の蛮族知性(Varvarigence)の無さから、それに対して気の利いた返答が出来ず辛酸を嘗めた。

きっと、次にそんな破廉恥を極めたセリフを言われた時こそは、本書で得られた知識が役に立ち、『おいおい失礼だぜ。「カニバリズム」とは”文化的な食人”の事で、自分がやっているのは”精神異常からくる食人”を意味する「アントロポファジー」の方だ。くれぐれも気を付け給えよ。』と立て板に水で言い返せるようになるはずである。

 

二つ目は、読書における「賢い」と「野蛮」のバランスが保たれたこと。
書籍を通じて人類の叡智に触れすぎると、良質な知見を得られるのは良いものの、なんだか小賢しさというか、偏屈な長老エルフやみたいな性悪成分までもが少しずつ心に蓄積されている気がする。これを防ぐには、自分の深層心理にある「人類は賢い、すなわち自分も賢い、グヘヘ」という蒙昧かつ無自覚な三段論法を破壊する他ない。
こういう時は「人類はものすごい愚かである」という対極な例を示せれば、「人類は愚か、すなわち自分も愚か、グヘヘ」という蛮族的了解が生まれ、たちまち精神は中庸に至り、モヒカンを生やしうる健康な魂が得られるのである。

もちろん、食人全書のおかげでそれは達成された。
スペインが南米の食人部族を集めてバトルロワイヤルを開いたり、商人に騙されたヨーロッパ人たちが偽ミイラの薬を万能薬と崇めたりしたと知り、自分の心の中のバーバリアン達が盛大な宴を始めた。今はエルフの村を焼いている。

 

次は麻薬の歴史の本を読んでみようと思う。

 

(つぶやき廃棄所)

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